生成AIにコードを書いてもらい、自分では思いつかなかったアイデアを提案してもらう。AIを使えば、以前はできなかったことができるようになる。
しかし、ふと疑問が湧く。
それは、本当に「自分の実力」と言えるのだろうか。
AIが生み出した成果を、自分の成果として受け取っていいのか。AIに頼るほど、自分自身の能力はどうなっていくのか。
そんな問いを、人間とコンピューターの融合を研究するソニーコンピュータサイエンス研究所(以下、ソニーCSL)のリサーチディレクター、笠原俊一さんにぶつけてみた。
すると、意外な問いが返ってきた。
「眼鏡とAIで、何が違うんでしょう」
2026年10月21日~22日、8年ぶりのオフライン開催となったソニーCSLのオープンハウス。その会場で聞いた、人間とAIの関係を捉え直す話を紹介したい。
【お話を聞いた人】
ソニーコンピュータサイエンス研究所(ソニーCSL)
リサーチディレクター
Cybernetic Humanity プロジェクトリーダー
笠原俊一さん(@shn_kasa)
博士(学際情報学)、沖縄科学技術大学院大学(OIST)シニアスタッフサイエンティスト。2017年東京大学大学院情報学環博士課程修了。08年ソニー株式会社入社後、MIT Media Lab 客員研究員等を経て、14年よりソニーコンピュータサイエンス研究所にリサーチャーとして参画。 人とコンピュータが融合することで生み出される”新たな人間性 : Cybernetic Humanity”を主題として、コンピュータ科学と人間科学の両側面からのアプローチを通じて探究。研究成果はコンピュータグラフィクスやHuman-Computer Interactionの主要国際会議やテックカンファレンスでの発表に加え、研究の体験化作品の展示・テクノロジーの社会実装を行う。23年よりソニーCSLとOISTの共同研究の一環でCybernetic Humanity Studioにて活動する。
「眼鏡とAIで何が違うんでしょう」
笠原さんは、人間とコンピューターが融合することで生まれる新たな人間性を探究する「Cybernetic Humanity」という研究に取り組んでいる。
人間がAIやロボットと行為や身体を共有し、自分にはできなかったことができるようになったとき、人はそれを「自分がやった」と感じるのか。テクノロジーによって能力が拡張されたとき、「自分」という存在の境界はどこまで広がるのか。
そんな問いを研究する笠原さんに、AIの力を借りて生み出した成果は、自分自身のものと言えるのかと尋ねた。
すると笠原さんは、自分の眼鏡を指してこう話し始めた。
「僕は、眼鏡を外すと何も見えないんですよ。かなり視力が悪いんです。でも、眼鏡をかければ見えるようになる。これとAIで、何が違うんでしょう」
確かに、眼鏡がなければ見えないものを、眼鏡の力を借りて見ることができる。だからといって、私たちは「それは自分の視力ではないから、見えたことにはならない」とは考えない。
笠原さんは続ける。
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