株式会社プラウドグロリア
代表取締役社長
菅野能史さん
大学卒業後、飲食業を経験しオーストラリアへ留学。帰国後、株式会社プラウドデータに入社しサーバエンジニアとして従事。2017年11月に株式会社プラウドグロリアを設立し、代表取締役社長に就任。自身が未経験から成長した背景から、「人柄採用」や未経験者向けの徹底した教育サポートを重んじる会社経営を行っている
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コード生成やリファクタリングなど、これまでエンジニアが手を動かしていた「作業」の多くが生成AIに代替されつつある昨今。システム開発の現場において、純粋な「技術力」の価値は、以前と比べて存在感が薄れつつある。
AI時代にエンジニアの市場価値を左右するもの。その答えとして「アントレプレナーシップ」の重要性を説くのが、株式会社プラウドグロリア代表取締役社長の菅野能史さんと、株式会社プラウドアドバンス代表取締役社長の村上行隆さんだ。
彼らは自らの経験から、言われたものをただ作る「作業者」を脱却し、顧客のビジネスや現場全体を成立させる視点を持つことこそが不可欠だと語る。
エンジニアにとっての「アントレプレナーシップ」とは、具体的にどのような思考や行動を指すのか。元エンジニアの社長二人に話を伺い、これからの時代に価値を生み出し続けるエンジニアの条件を探った。
株式会社プラウドグロリア
代表取締役社長
菅野能史さん
大学卒業後、飲食業を経験しオーストラリアへ留学。帰国後、株式会社プラウドデータに入社しサーバエンジニアとして従事。2017年11月に株式会社プラウドグロリアを設立し、代表取締役社長に就任。自身が未経験から成長した背景から、「人柄採用」や未経験者向けの徹底した教育サポートを重んじる会社経営を行っている
株式会社プラウドアドバンス
代表取締役
村上行隆さん
高校卒業後、製造業・営業職を経験した後、独学でシスコシステムズのCCNA資格を取得。その後、システム企業でネットワーク設定業務等に従事し、2016年に株式会社エーアイエルに入社。ITインフラ事業本部のエンジニアとして、大手Webサービス企業のグループ企業間ネットワークの運用・開発などに従事。21年にプラウドグロリアへ転職し、24年6月に独立しプラウドアドバンスを設立。経営業と並行し、現役のネットワークエンジニアとしても活動している
ーー生成AIの台頭により、コマンドの調査やコード生成など「手を動かす作業」は代替されつつあります。現場レベルで、エンジニアに求められる役割はどう変化していると感じますか?
村上:個人的には二極化が進んでいる印象です。指示された設計書通りにコードを書く、あるいはエラーログを見て修正パッチを当てるといった「作業」は、AIの独壇場ですよね。プロジェクトのチケットを上から順番に消化していくだけの「作業者」の価値はもはやありません。
今求められているのは、そのチケットの「背景」を疑える人です。「PO(プロダクトオーナー)はこの機能を今スプリントで実装しろと言うが、既存のマネージドサービスを組み合わせれば開発工数を8割削減できるのではないか?」と提案し、ビジネス全体のコストとスピードを調整できる人。そういったエンジニアの価値が急激に高まっています。
ーー作業者から脱却し、現場を成立させる側になるためには何が必要なのでしょうか? お二人はそれを「起業家マインド(アントレプレナーシップ)」と表現されていますね。
菅野:はい。ただ、これは「独立しろ」という話でも、よくある自己啓発的な「当事者意識を持とう」という精神論でもありません。極めて具体的な日々の業務スタンスの話です。私はこれを「輪の外を考える力」と呼んでいます。
例えばインフラ構築において、ただ要件通りに強固なサーバーを組むのは「輪の中」の仕事です。輪の外を考えるエンジニアは、「このトラフィック規模なら、このアーキテクチャはオーバースペックだ。構成を見直せば、AWSの月額ランニングコストを30%削減できる」と、顧客の損益まで考えてアーキテクチャを組みます。
自分の作業枠を超えて、顧客の事業のP/L(損益計算書)に責任を持とうとする思考。これが現場におけるアントレプレナーシップです。
村上:現場のエンジニアは、良くも悪くも「技術的に正しいこと」や「最新の技術を使うこと」にこだわりがちです。しかし、顧客が求めているのは技術の品評会ではなく「自社のビジネス課題の解決」ですからね。
「このコードを書けば、本当にコンバージョン率が上がるのか?」「この設定は、将来の運用保守メンバーの首を絞めないか?」と、ビジネスの最終的な着地点から逆算して自分のタスクを定義し直せるか。AIの登場によって、そうした役割を担えるエンジニアが求められるようになりつつあります。
ーーお二人が共に現場で働いていた当時、どういったシーンでお互いのアントレプレナーシップを感じましたか?
菅野:村上さんは、エンジニアが陥りがちな「技術的なプライド」に固執せず、目的のためにスッと頭を下げられるところが印象的でした。
当時、村上さんは私より5年ほど先輩で、既にネットワーク領域で高いスキルを持っていました。でも、別の領域であるサーバー担当の若手だった私に対しても、「AWSのここの構成、どうやって組んだの? 教えてよ」とフラットに聞いてくるんです。
年齢や経験に縛られず、「プロジェクト全体を円滑に進めるため」なら周囲を巻き込んで素直に吸収する。良い意味での「人たらし」でしたね。私が起業する際、過去に唯一「一緒にやりませんか」と声をかけたのが村上さんでした。
ーー経験豊富な先輩が若手に素直に教えを請うというのは、頭では分かっていても実践するのは難しいですよね。
村上:そうですね。エンジニアとして経験を積むと、自分の得意な「勝ちパターン」ができるものです。新しい環境や案件にアサインされた時でも、つい使い慣れた技術や自分のやり方で進めたくなってしまうことはよくあります。
でも、お客さまが求めているのは「技術的なこだわり」ではなく、「ビジネスの課題をいかに解決するか」です。その「ユーザー目線」に立つためには、自分の成功体験を一度脇に置いて、経験が浅かろうがその領域に詳しい人に「教えて」と言えるか。その柔軟性が、結果的に自分の視野を広げることにつながるんだと思います。
ーー逆に、村上さんから見て、菅野さんのどのような行動にアントレプレナーシップを感じていましたか?
村上:菅野さんは、システム全体を俯瞰する冷静さが群を抜いていました。
開発の現場では、設定ミス一つでシステム全体に影響が出るようなヒヤリとする場面がどうしても起きます。そういう炎上しそうな時でも、彼は全体の影響範囲を即座に計算して、「今は原因究明よりも、まずは前の状態に切り戻して(ロールバックして)サービスを復旧させましょう」と、淡々と最善手を打つんです。
ーートラブルが起きた際、どうすればそこまで冷静に判断できるのでしょうか?
菅野:トラブルが起きた際、技術者としては「原因を特定して完璧に直したい」というエンジニアのエゴが働きがちです。
しかし、アントレプレナーシップの視点を持つなら、見るべきはシステムのログではなく「顧客のビジネスが1分止まるごとの損失額」です。そう考えると、ビジネスへのダメージを最小化するには「即時ロールバック」を最優先した方が良いという結論になります。
村上:論理的に正しい判断を下すだけなら、他の人にもできるかもしれません。ただ、菅野さんの提案が現場でスッと通り、プロジェクトマネジャーやお客さまからも「彼が言うならそうしよう」と納得してもらえるのは、普段のコミュニケーションの賜物でした。
というのも、彼は日頃から「隣のチームが今どんな課題を抱えているか」まで雑談レベルでヒアリングし、情報共有のハブになっていたんですよね。結局のところ、どんなに技術力があっても、どれほど注意を払っていても、ミスは起きます。
その時に「一緒に解決しよう」「彼に任せよう」と思ってもらえるだけの信頼貯金 残高を、日頃からどれだけ積み上げているか。それこそが、AIには代替できない「現場を回すエンジニア」の最大の武器だと思います。
ーー現場のエンジニアが自力でアントレプレナーシップを持ち続けるのは容易ではありません。プラウドグループでは、そのマインドを醸成するために組織としてどのようなアプローチをとっているのでしょうか?
菅野:エンジニアの育成というと技術の話に終始しがちですが、私たちはあえて「経営」や「お金」の話も積極的にしています。
会社というのは社会の縮図です。世の中のビジネスがどういう仕組みで成り立っていて、なぜこの納期や予算が設定されているのか。あるいは、国の平均年収に対して、自分の今のスキルセットならどれくらい稼げるのか。
そうした「社会における自分の立ち位置」を知らなければ、自分の市場価値も、次に目指すべきキャリアも測りようがありません。だからこそ、現場のエンジニアにもビジネスの生々しい背景を理解してもらう努力をしています。
村上:技術だけを教えて「後は現場で頑張れ」では、言われた通りに手を動かすだけの作業者しか育ちません。私たちはお客さまのビジネスを技術で支える立場だからこそ、エンジニア自身が「利益が生まれる仕組み」を理解し、一人のビジネスパーソンとして自律している必要がありますね。
菅野:ちなみに現場レベルで取り組めることで言えば、自分の担当業務の効率化から始めてみることを推奨しています。「この手作業、もっと効率化できないか?」「他のプロジェクトではどうやっているのか?」と疑問を持ち、情報を集めて少しだけやり方を変えてみる。この小さなPDCAを回す経験が、自分の業務範囲という「輪の外」を考える第一歩になりますから。
ーーなるほど。ただ、そこまでビジネス視点が育つと、中には「本当に自分で起業したい」と独立していく人も出てきそうですね。
菅野:そうですね。現に私も村上も、プラウドグループから「のれん分け」の形で起業しています。
もちろん社員全員に起業を推奨しているわけではありませんが、「実家の家業をITの力で継ぎたい」とか「自分で事業を立ち上げたい」という明確な志があるなら、全力で応援します。
優秀な人材が離れるのは一時的には痛手かもしれませんが、当社の元から巣立ち、将来的に良きビジネスパートナーになってくれるのであれば、お互いにとってこれ以上ないメリットになりますからね。
ーー独立してビジネスパートナーになるにせよ、現場の中心役として活躍し続けるにせよ、行き着くのは「自ら現場に責任を持つ」という当事者意識なのだと感じました。
村上:私たちが手がけているインフラの領域で言えば、なおさら最後は「責任感」に尽きます。
システムが止まれば社会に甚大な影響を及ぼす。AIは便利なコードや構成案を瞬時に出してくれますが、最終的な「責任」は絶対に取れません。AIをツールとして使いこなしながら、システム全体に責任を持ち、現場を最後まで成立させるのは、やはり人にしかできないコアな役割ですね。
菅野:AIから的確なアウトプットを引き出すためにも、結局はコミュニケーション能力が問われます。顧客が何を求めているのかを汲み取るインプット力、それをシステムの要件として最適化する要約力、そして周囲を巻き込んで形にするアウトプット力です。
これらの力を身に付けるには、技術的なプライドに縛られず、過去の勝ちパターンを捨てて、素直に学び続けるしかありません。逆に言えば、そのマインドさえあれば、どれだけ技術が進化しようとも、替えの効かない存在として価値を発揮し続けられるはずです。
撮影/赤松洋太 取材・文/今中康達(編集部)
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