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AI時代に磨くべきスキルの正体とは? 再定義されるエンジニアの価値【岩瀬義昌、河野太郎、伊藤淳一、濱崎竜太】

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生成AIやAIエージェントが瞬時にコードを生成し、圧倒的なスピードでタスクをこなす時代。プログラミングの学習コストが下がり、効率化が極限まで突き詰められる中で、多くのエンジニアが「自分という存在の価値」をどう定義し直すべきか模索している。

目先のテクニックや便利ツールのキャッチアップに追われるだけの働き方は、いずれAIに代替されてしまうのではないか――そんな焦燥感を抱く人も少なくないだろう。

しかし、AIがもたらす変化の波を冷静に見つめ直すと、自ずと私たちが真に磨くべきスキルの本質が見えてくる。第一線で活躍する4人の識者の言葉から、AI時代に淘汰されない「エンジニアのスキルの正体」を解き明かしていこう。

【岩瀬義昌】「普遍の基礎」を疎かにしない

岩瀬義昌さんの写真の横に「AIネイティブ世代が学ぶスピードはチート級ですよ」とキャッチコピーが載っている画像。

生成AIを使えば、難解な技術書の内容も一瞬で噛み砕かれ、即座に動くプロダクトを作ることができる。いわば「学びのチート」が可能になった世代に対し、岩瀬義昌さんは、そのアジリティを評価しつつも「基礎のスキップ」に潜むリスクを指摘する。

簡単なシステム開発ならAIだけでも回せるかもしれない。しかし、トラブルシューティングや構造的な議論が必要になった際、真価を問われるのはコンピュータサイエンスや基礎理論の理解だからだ。

「ChatGPTがこう言っているから大丈夫です」では、説明責任を果たしたことになりません。なぜなら、説明対象の相手が納得しないからです。また、生成AIのアウトプットをそのまま結論にしていると、途中の思考プロセスが抜け落ちており深い議論に対応できません。

技術のトレンドや「応用」のレイヤーは時代とともに移り変わるが、その裏側にあるプログラミング言語の思想やアーキテクチャの「基礎」は失われない。

例えば、JavaScript の根幹にはプロトタイプベースという考え方があります。加えて、関数型言語のエッセンスも取り入れられています。この思想に基づくプログラミングの作法や、「なぜそのような構造になっているのか」「関数型のメリット・デメリット」という背景を理解することは、今もなお重要です。

こうした部分を理解しておくと、「なぜこの書き方だと速く動くのか」「なぜここでバグが出やすいのか」といった勘どころがつかめるようになります。「変わらない根っこ」を押さえておくことで、新しい技術に出会ったときにも、応用が利きやすくなるでしょう。

手軽なショートカットに飛びつく前にあえて遠回りをし、時代が変わっても「変わらない根っこ」を体得すること。それこそが、激変期を生き抜くエンジニアの堅牢な土台となる。

学びの“チート”をマスターした世代は「基礎」が欠落しやすい? AIネイティブな若手の育成で押さえておきたいこと
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【河野太郎】世界との「共通言語」を持つ

衆議院議員で元デジタル大臣の河野太郎さんがイベントに登壇している様子。

AI翻訳や要約ツールの精度が飛躍的に向上した今、「言語の壁はAIが消し去ってくれた」と考えるエンジニアは多いかもしれない。しかし、元デジタル大臣の河野太郎さんは、その風潮に強い疑義を呈する。

外交やデジタルの最前線で世界のトッププレイヤーたちと直接渡り合ってきた河野さんは、ツール越しでは決して得られない「情報の生々しさ」の価値を知り尽くしているからだ。

いろいろな翻訳ソフトやAIがあるから、もう言葉はAIに任せようと思っている人がいるかもしれないけれども、やっぱり僕はそうじゃないと思います。

自分で外務大臣をやっていたときも、相手と向き合って、正式な交渉をしているだけでは物事が決まらなかった。その後に飯を食ったり、コーヒーブレイクに行ったり、あるいはトイレなんかに並んでいるときに、「こそこそ」と話す。そんな話からいろんなものが動いてくるんです。

エンジニアの世界において、この「こそこそ話」にあたるものこそ、公式ドキュメントやAIが整理して提示してくれる前の「生のコンテキスト」だ。

最先端のコミュニティーで交わされる開発者同士の雑談、Slackで吐露されるアイデアの芽、熱気あふれる対話……AIが翻訳・生成できるのは、あくまで「すでに構造化され、過去のものとなった情報」に過ぎない。技術の覇権が一年周期で入れ替わる現代、勝負を分けるのは構造化される前の一次情報へ、どれだけダイレクトにアクセスできるかだ。

英語で会話ができる、英語で仕事ができる、英語でディスカッションができる。それをもっていないと、世界で戦うぜと言っても、戦うための武器なしで行くということになってしまうかと思います。

言葉をAI任せにするということは、思考と一次情報へのアクセス権を第三者に委ねることに他ならない。

日本にいながらにして世界最前線の熱量と知見を泥臭く盗み出し、世界のプレイヤーと対等にディスカッションするための共通言語となる英語。それを持てるかどうかが、エンジニアのキャリアの射程距離を決定づけるのだ。

「今の日本は完全に二軍」河野太郎が突きつける、世界標準のバッターボックスに立つ覚悟
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【伊藤淳一】「解釈力」を研ぎ澄ます

伊藤淳一が取材に応じている様子。

AIを使えば、誰もが瞬時に洗練されたドキュメントやコードを出力できるようになった。だが、ソニックガーデンの伊藤淳一さんは、自らの手で「書く」という泥臭いプロセスを放棄することに強い警鐘を鳴らす。

アウトプットとは自分の名前とセットで世に出るもので、いわば名刺代わりになるからです。

技術記事も本来は「私はこれができる」「自分はこの技術について理解している」という証明になるもの。ですが、生成AIの力を借りて自分の実力以上のものをアウトプットしたら、それは誇大広告になってしまいます。

伊藤さんが考える「書くスキル」とは、単なる文字入力の作業ではない。自分の思考を整理し、技術の裏側にあるロジックを深く解釈するためのコアスキルだ。

自分でコードを書いてきた人なら、生成AIが書いたコードを見たときに、「これは違和感がある」「これは良からぬ結果を招くんじゃないか」といったセンサーが働きますよね。でもプログラミング経験が浅い人は、出力されたコードを見てもよく分からず、「AIが書いたのだから大丈夫だろう」と考えてそのまま取り込んでしまう。その結果、誤りが含まれていてミスやトラブルにつながってしまった……なんて場面が容易に想像できます。

つまり「自分でやろうと思えばできる」と言えるだけのスキルが前提になければ、生成AIを十分に使いこなすことはできないのです。

効率化の波に身を任せて思考をAIに明け渡すのではなく、最後のアウトプットに対する責任を担う「解釈力」と「判断力」を磨くこと。それこそが、道具に振り回されないプロフェッショナルの条件だ。

AIが生む「実力以上の自分」という誇大広告。エンジニアが失ってはいけない「書く」スキルの価値とは【伊藤淳一】
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【濱崎竜太】愛せる技術の「型」とエコシステムを知り尽くす

Laravel Holdings Inc.のSenior Software Engineer濱崎竜太さんが取材に応じている様子。

「この技術はオワコン」「これからは〇〇一択」――SNSを飛び交うトレンドの波に呑まれ、目移りばかりしていないだろうか。米国・Laravel社で唯一の日本人エンジニアとして活躍する濱崎竜太さんは、約10年間にわたって一つの技術に“一途”であり続けてきた。

濱崎さんは、「一つの技術に軸足を置くことは、決して視野を狭めることではない」と断言する。

大事なのは、自分の愛せる技術にしっかりと軸足を置きながら、そのレンズを通して周辺のトレンドも見ていくことです。

こうした軸を持つことは、変化に取り残されることではありません。むしろ、変化を自分なりに理解するための視点を持つことだと思っています。

Web開発に必要な作法や設計思想が揃ったフレームワークの「レール」を深く理解している者こそ、AI時代において圧倒的なアドバンテージを持つ。ゼロからAIにコードを書かせるのではなく、文脈(コンテキスト)を与えられるからだ。

Laravelのように、認証からデータベース接続、キュー処理まで、Web開発に必要な機能が公式で一通り揃っていると、それがそのまま「AIに対する強力なコンテキスト」になります。

何もない更地から作らせるのではなく、「このフレームワークの、この公式機能の作法に従って書いて」と明確な道筋を示すことができる。自分が愛用している技術のレールを知り尽くしていればいるほど、AIという強力なアシスタントを迷いなく使いこなせるようになるんです。

表層的なトレンドを浅く追いかける「トレンド消費」を捨て、自らの軸となる技術のエコシステムと裏側の構造まで知り尽くす。その深さこそが、AIを自在に乗りこなすための力となるだろう。

「一つの技術にこだわるのはリスクじゃない」Laravel社唯一の日本人エンジニアが、10年間“一途”を貫いて見えた景色
「一つの技術にこだわるのはリスクじゃない」Laravel社唯一の日本人エンジニアが、10年間“一途”を貫いて見えた景色

AIがコードを書き、文章を訳し、思考を補助してくれる時代だからこそ、エンジニアに問われているのは単なる「作業のスピード」や「ツールの熟達」ではない。AIという強大な「道具」を手に入れた今だからこそ、それを動かす人間側の「地肩」を鍛えることが重要なのだ。

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