売り手市場が続くエンジニアだけれど、希望の企業の内定を得られるかどうかは別の話。そこでこの連載では、転職者・採用担当者双方の視点から“理想の転職”を成功させる極意を探る
「自分はまだ戦えるのか」という不安からの脱却。ブランク転職をかなえたエンジニアが示した“スキル証明”の最適解
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技術革新が目まぐるしい現代において、エンジニアが最も恐れるべきは「停滞」かもしれない。
マネジメントや人材育成は、間違いなく組織への貢献であり、キャリアの成熟とも取れる。しかし、エンジニア自身にとってはどうか。第一線で開発に励んでいた実感が薄れ、手元のスキルが風化していくーーそんな不安感を抱えているエンジニアは、きっと少なくないだろう。
今回スポットを当てるのは、そんな「現場なき安定」からの脱却を試みた一人のエンジニア。大手通信会社のビジネスパートナーとしてシステム開発を手掛けるエーティケーで働く高橋智洋さんだ。
彼は何を求めて同社に転職したのか。そして同社は、なぜ彼を採用するに至ったのか。この一つの転職ヒストリーから、将来を憂うエンジニアが理想的なキャリアを描くヒントが見つかるはずだ。
【中途入社者】
エーティケー
キャリアサービス部 ソフトウェアデザイン課
高橋智洋さん
情報系学部を卒業後、SES企業にエンジニアとして新卒入社。その後、新入社員向け技術研修の講師として、自社・他社を問わず約70名規模の研修で教材作成や講義、運営を担当。2025年にエーティケーに転職し、通信系企業向け業務管理システムの開発や保守運用に携わっている
【採用担当】
エーティケー
代表取締役社長
戸川真哲さん
1999年の創業時から参画し、携帯電話の2G以降の進歩を支える通信インフラ開発に長年携わってきた経歴を持つ。2021年6月より現職
採⽤担当(代表)⼾川さんに聞いた「内定のポイント三つ」
・新しいことを一緒にやっていけそうな技術力とバイタリティー
・絶え間なく努力を続けられるひたむきさ
・目的に向かってやりきることができる姿勢
キャリアの停滞を打破する「原点回帰」の決断
――高橋さんは現在エンジニアとして現場で働かれていますが、前職では新人エンジニア向けの研修講師をされていたんですよね。
高橋:はい。ただ、講師になる以前は前職でも開発業務に携わっていたんですよ。運用保守から始まってテスト、詳細設計、基本設計まで、さまざまなプロジェクトで一通りの経験を積みました。その後、徐々に新人研修がメイン業務になっていったんです。
ーー転職を検討するようになったきっかけは何だったのでしょう。
高橋:研修業務もやりがいはあったのですが、もともと私は現場で手を動かす仕事が好きで。開発現場から離れる時間が長くなればなるほど、「エンジニアとしてもっと経験を積んだ方がいいのでは」と思うようになっていきました。
仮に今後も講師として働いていくとしても、自分自身の経験が足りていなければままなりません。まずは現場でスキルを磨きたいと考えて、エンジニアとして転職することに決めました。
――エンジニアとしてはブランクがある状態での転職活動だったんですね。企業選びにも慎重になったのでは?
高橋:いえ、これといって細かい条件は決めませんでした。むしろ、自分のスキルが停滞している感覚があったので、経験を活かしつつも新しい技術に触れていける会社を探しました。
早く経験が積めるようにハードなプロジェクトを進めている企業の選考も受けてみたのですが、長く働けるイメージが持てなくて。研修講師時代も業務量が多く、朝から晩まで働いて体調を崩してしまったことがあったので、無理なく続けていける環境にしようと思い直しました。
ーーエーティケーとはどのように出会ったのでしょうか。
高橋:実は、友人がエーティケーで働いていまして、エンジニアを採用していると聞いたことがきっかけなんです。しかも、「ソフトウエア開発に特化したチームを新設する」と聞いて興味を持ちました。
ーー久しぶりにエンジニアとして働く上に新設部門となると、尻込みしてしまいそうなものですが不安はなかったんですか?
高橋:全くなかったと言ったら嘘になりますが、どんな企業でも自分にとっては新しい環境であることに変わりはありませんから。せっかくのチャンスなので、自分の経験がどこまで通用するか挑戦してみようと思いました。
アプリ開発を通じて示したスキル&完遂力
――戸川さんは、その当時どのような人材を採用していたのでしょうか。
戸川:エーティケーでは設立以来、通信インフラ分野の技術、特にサーバやネットワークの環境構築、検証、保守を中心に事業を展開している他、セキュリティーコンサルティングにも強みを持っています。前者では必要に応じて作業の自動化や支援ツールの開発を行って業務効率化に取り組み、後者では新しい技術やツールをいち早く導入してお客さまに最適な提案を行ってきました。
近年、DX化の重要性が一層高まっていることを受けて、これまで培ってきた技術をより広く活かすべく、DX推進やお客さまのニーズに合わせたプログラム開発を専門とする開発チームを発足。高橋さんが応募してくれたのは、そのときの採用でした。
新設のチームなので、面接の場でも業務内容含めて詳しく伝えられる状況ではありませんでした。だからこそ、不確定要素も含めて楽しめることが第一条件でしたね。新しいことでも「一緒にやっていきましょう」というスタンスを持っている人を探していました。
――高橋さんの面接では、どんな点が印象的でしたか?
戸川:高橋さんは、自分のスキルを証明するためにオリジナルのアプリを作ってきたんですよ。技術力としても申し分なかったですし、何よりも「これを作ろう」と決めて実際に仕上げてきた行動そのものが評価できると感じました。
技術のトレンドは時代とともに移ろいますが、「必要なものを考えて、どう作るか決めて、きちんとやり切る」という姿勢の重要性は変わりませんから。
――高橋さんはどういった意図でアプリを作ったんですか?
高橋:私のキャリアは講師としての期間が長いので、「現場で何ができるのか」というエンジニアとしての実力を伝えるのが難しかったんです。そこで、これまでに扱ってきた技術を組み合わせてアプリを作ったら、手を動かせることの証明になるかなと考えました。
フロントエンドからバックエンド、クラウド技術まで一通りの知識はあったので、「全部触れますよ」ということが伝わればと思って。
高橋さんが開発したアプリ(一般には非公開)
■御朱印管理アプリ
・Amazon EC2、Amazon S3、Amazon CloudFront、Amazon Route 53、WSL2
・PostgreSQL
・Spring Boot(Java)
・React(TypeScript)
・GitHub、VS Code Dev Containers関係の技術
戸川:高橋さんのバイタリティーには感心しましたね。他にも、はんだごてを使ったものづくりに取り組んでいたり、バイクで全国を回ったりと、自分で工夫して楽しもうとする姿勢が印象的でした。好奇心を持って自発的に何かをやり遂げることができるクリエイティブな人だなと感じたんです。
資格も多数取得されていたので、ひたむきに勉強を続けてきた様子も伝わってきた。高橋さんなら新しいことでも好奇心を持って学び、着実にキャッチアップしていけるだろうと確信できました。
社会の“当たり前”を支えるエンジニアの力
――高橋さんは現在どのようなプロジェクトに携わっているのですか?
高橋:通信インフラ系企業向けの業務管理システムの追加開発と保守運用を担当しています。念願の開発現場に戻ることができて、自分のスキルが活かされている実感がありますね。
戸川:高橋さんの力もあって、新しいチームの立ち上げも順調です。高橋さんは技術に対して非常に貪欲で、周りにも「自分も勉強しないと」と刺激を与えてくれるんですよ。
高橋:エーティケーは技術習得のためのバックアップが手厚いので、いろいろと学ばせてもらっています。今携わっているPaaSの領域だけでなく、今後の通信事業でトレンドになりそうな分野もしっかり勉強していきたいですね。
現在は、クラウドサービスに関する勉強に取り組んでいるところで、資格取得制度を活用してAWS Developer AssociateやAWS Certified Solutions Architect – Professionalなども取得しました。今後もスキルアップを続けて、技術のことなら何でも相談してもらえるような存在になりたいと思っています。
戸川:高橋さんのように、新しいスキルを身に付けつつも既存の技術を大切にできるエンジニアは、本当に貴重です。
私たちは通信インフラ系企業を支える立場として、「通信を途切れさせない」ことを使命にしてきました。メディアでよく見かける名の知られた企業のように、かっこいい話はできないかもしれません。それでも、365日24時間、例え災害時であろうとも緊急通信や通話がつながっているという「当たり前」を支え続けてきました。その先には、人々の安心や安全な暮らしがありますから、その原点は忘れず、新しいスキルをさまざまな当たり前を守るために役立てていきたいです。
だからこそ、高橋さんのように「『当たり前』を大切にしながら、新しいことにも挑戦してくれるエンジニア」の存在が欠かせません。彼らが活動しやすく、成長できるような環境を全力で整えていくつもりです。そして弊社社員には、誇りをもって仕事をしてもらえたらと願っています。
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取材・文/福永太郎 撮影/桑原美樹 編集/秋元 祐香里(編集部)
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