悩みもニュースも、言葉にしてスッキリ
澤円の「モヤモヤ言語化ラボ」元・日本マイクロソフト業務執行役員であり、“プレゼンの神”こと、澤円さんが、エンジニア読者のモヤモヤや気になるニュースを、分かりやすく“言語化”。「どう考えたらいいか分からない」を「そう考えればいいのか」に変える、頭と心の整理の場です。あなたが前に進むためのヒントを一緒に見つけていきましょう。
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澤円の「モヤモヤ言語化ラボ」元・日本マイクロソフト業務執行役員であり、“プレゼンの神”こと、澤円さんが、エンジニア読者のモヤモヤや気になるニュースを、分かりやすく“言語化”。「どう考えたらいいか分からない」を「そう考えればいいのか」に変える、頭と心の整理の場です。あなたが前に進むためのヒントを一緒に見つけていきましょう。
皆さんこんにちは、澤です。
今回の相談者さんは、目の前に大きすぎるチャンスが転がっていて戸惑っているようです……
相談内容
40代半ば。開発部門の2番手として組織をまとめていますが、大変なことの方が多い日々です。
先日、軽い気持ちで転職サイトに登録したところ、今の会社ではあり得ない好条件のスカウトが届きました。カジュアル面談での評価も高く、正直「行かない理由がない」ほどです。
ですが、この年齢まで多くの組織の浮沈を見てきたからこそ、足がすくみます。外からは見えない組織の歪みがあるかもしれないし、自分の実績も「今の環境だから通用している特殊能力」かもしれない。新天地で「期待外れの40代」になり下がるリスクが、リアルに想像できてしまうのです。どこかに「君がこの会社に入ったら100%活躍できる」と確証してくれる未来予測機があればいいのに、とすら思ってしまいます。
現職へのしがみつきは思考停止なのか、かといって全てをリセットして新天地のガチャを引く勇気もない。このどっちつかずな停滞感から抜け出す考え方を教えてください。
これはもう、ボクの目からしたら「すぐ行きなはれ」以外の回答はないですね。
この一言で今回の記事は終了にしてもいいくらいです(笑)
それだけのオファーが来ているということは、今までにやってきた仕事の実績が業界で求められるものであることの証拠です。なので、すでに活躍するための材料が揃っていると言ってもいいでしょう。なかなかいい条件のスカウトが来なくて悩んでいる人たちからすれば、ひたすら羨ましい状況なのは間違い無いですね。
とはいえ、足がすくんでしまうという心理も分からなくもないです。人間は本能的に「知らないものにビビる」という反応をするようにできていると、心理学の分野などでも証明されています。
これはネオフォビア(Neophobia / 新奇恐怖症)と呼ばれ、「新しいもの」や「経験したことがないもの」に対して強い拒絶や恐怖、嫌悪感を抱く心理傾向のことです。元々は食べ物(食べたことのないものを拒む)に対してよく使われますが、環境の変化全般にも適用されます。
なので、想像以上の期待をされている新天地に対して、嬉しい気持ちよりビビる気持ちの方が上回ってしまうのも、無理からぬ話なわけです。
そしてもう一つ、人間には「破滅的思考(カタストロファイジング / Catastrophizing)」というものが脳内のメカニズムとして組み込まれています。
心理学において破滅的思考とは、「まだ起きていない未来のことに対して、最悪の結末を勝手に想像し、それが確実に起こると思い込んで破滅的な恐怖を感じる」という認知の歪み(思考のクセ)の一種です。
ポイントは、「起きる確率」を無視して、「もし起きたら終わりだ」という「影響度」の大きさだけに脳がハイジャックされてしまう点にあります。ネオフォビアと破滅的思考の組み合わせで、なかなか一歩踏み出せない……これは脳がある意味「正しく機能している」という証拠でもあります。
40代でNo.2のポジションで活躍してきた相談者さんですから、さまざまな仕事の情報を解像度高く処理し続けてきたことでしょう。
その経験があるからこそ、将来のリスクも同時に解像度高く想像してしまっているのではないでしょうか。
でも、転職後の失敗は確定された事実でもなんでもありません。
起きてもいないことにビビりすぎてしまうには、今回のオファーはあまりにも惜しいチャンスだと思うんですよね。
多くの組織の浮沈を見てきたあなたの『優秀なリスク管理能力』が、情報の少ない新天地に対して、勝手に最悪のバグ(破滅的思考)をシミュレーションしているだけです。
必要なのは、勇気ではなく『デバッグ(情報収集)』です。
この相談を読むと、まだこのオファーは続いているようですね。
まず、どんどん面接を進めていっても、失うものがないどころか、さらに多くの情報収集をすることができます。情報収集をすると、今度は「自分のできる行動」が具体的に脳内でイメージできるようになるでしょう。具体的な行動がイメージできると、恐怖心は相対的に減っていくはずです。
「何をすればいいのかわからない」という不確実性が、今の不安な気持ちを作っているのであれば、いかにして「自分がやること」を具体的にしていくかがポイントになると思います。
その会社の会議でどんな発言をするのか、ホワイトボードにどんなことを描くのか、SlackやTeamsのチャンネルにどんなポストをするのか……そんなイメージが脳内でできるようになると、不安を小さくできると思います。
そして、この一文。
「どこかに『君がこの会社に入ったら100%活躍できる』と確証してくれる未来予測機があればいいのに」
これもまた、不安な気持ちを増幅しちゃっている原因ですね。
0-100思考は、どうしても行動をブロックします。
打率10割のプロ野球選手なんていません。
ボクシング無敗の王者だって、相手のパンチを全部避けているわけではありません。
100%を実現するのは、そもそも無理な話なので安心してください(笑)
実は未来予測機って、ボクらもう普通に使ってるんですよ。
天気予報です。
明日の降水確率が100%じゃないからといって、傘を持つかどうかの判断を放棄する人って、まあいないですよね。40%とか60%とか、その微妙な数字を見ながら「じゃあ折り畳みを鞄に入れとくか」くらいの感じで、毎日ちゃんと動いています。100%当たる天気予報なんて、この世にひとつも存在しないのに、です。
転職も、たぶんこれと同じ解像度で見ていいんじゃないかなと思うんですよね。
「行ったら100%活躍できる」保証はどこにもない。
でも、それは今の会社に残ったって同じことです。
今の環境が5年後も同じ形で続いている、という保証もまた、誰にも出せないわけですから。
どっちを選んでも、100%はない。だとしたら、雨に濡れないように折り畳み傘を鞄に忍ばせておく——つまり、面談を進めて情報を集めて、「新しい会社での自分の動き方」を具体的にイメージしておく——という「できること」を淡々と積んでいくのが、いちばん現実的なんじゃないかなと。
繰り返しになりますが、あくまでボクの主観です。でも、これだけのオファーが来ているあなたが、降ってもいない雨にビビって家から一歩も出ない、というのは、なんだかもったいないなあと思っちゃうんですよね。傘は、もう鞄に入っています。あとは、ドアを開けるだけです。
というわけで、やっぱり結論は最初と同じ。「すぐ行きなはれ」です(笑)
まずスカウトをくれた会社の人に会いに行って話をしましょう。その中で、自分に対する解像度も上がっていくでしょうし、未来の自分への信頼度もアップしていくはずです。未来はいくらでも変えられます。心の底から応援しております!
AI時代のできる人は、Giver(=与える人)である
元・マイクロソフト業務執行役員で「伝説のマネージャー」「プレゼンの神様」の異名をとる著者が放つ、令和版『人を動かす』決定本!
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株式会社圓窓 代表取締役
澤 円(@madoka510)
立教大学経済学部卒。生命保険のIT子会社勤務を経て、1997年、日本マイクロソフトに転職、2020年8月に退職し、現在に至る。プレゼンテーションに関する講演多数。武蔵野大学専任教員。数多くのベンチャー企業の顧問を務める。 著書:『外資系エリートのシンプルな伝え方』(中経出版)/『伝説マネジャーの 世界No.1プレゼン術』(ダイヤモンド社)/『未来を創るプレゼン 最高の「表現力」と「伝え方」』(プレジデント社)/『「疑う」から始める。これからの時代を生き抜く思考・行動の源泉』(アスコム社)/『「やめる」という選択』(日経BP社) Voicyチャンネル:澤円の深夜の福音ラジオ オンラインサロン:自分コンテンツ化 プロジェクトルーム
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