株式会社ブランチ
代表取締役社長
松枝一孝さん
株式会社ブランチ 代表取締役。1984年に慶應義塾大学工学部を卒業後、キヤノン株式会社に入社。ファックス開発やプリントサーバー開発、大手保険会社向けのカラープリンター関連ソフトウエア開発などに携わったのち、2007年に株式会社ブランチを創業
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転職先を選ぶ際、つい提示される年収や待遇といった「目に見える条件」ばかりに目を奪われがちだ。しかし、エンジニアとして長く、そして何より楽しく働き続けるためには、会社そのものに根付く雰囲気や文化といった言語化できない部分こそが重要ではないだろうか。
その空気感を決定づけるのは、企業のトップに立つ人間の思想と覚悟に他ならない。
今回話を聞いた株式会社ブランチの代表・松枝一孝さんは、自らも開発業務に携わってきた経歴を持つ元エンジニア。彼が挑むのは、孤独を生みがちなSESであっても「楽しさ」を持ち続けられる仕組みづくり。
徹底した無駄の排除と、極限までエンジニアの希望に応える自由度の高さ。代表自らがエンジニアと向き合った結果を、松枝さん自身と、同社に転職した2名のエンジニアの言葉から見ていこう。
株式会社ブランチ
代表取締役社長
松枝一孝さん
株式会社ブランチ 代表取締役。1984年に慶應義塾大学工学部を卒業後、キヤノン株式会社に入社。ファックス開発やプリントサーバー開発、大手保険会社向けのカラープリンター関連ソフトウエア開発などに携わったのち、2007年に株式会社ブランチを創業
大野 晃さん
アパレルショップで販売員として接客業に従事した後、アパレル業界向けECサイトの運営会社へ転職し、自社システムを活用した顧客対応や業務運営に携わる。ブランチに転職後はエンジニアとしてプロジェクトに参画している
吉田晴子さん
大学卒業後、SIerに入社し、約8年にわたって開発業務を担当。産休・育休を取得後、事務・研修関連の業務へと担当変更。退職後、一般事務や在宅でのWebライティングなどを経て、2024年2月にブランチへ入社
ーーブランチは「エンジニアが楽しんで働ける会社」を目指しているとか。そう考えるようになった背景を教えてください。
松枝:私は新卒で入社した会社でエンジニアとして働いていたのですが、「辞めたい」と思ったことがないくらい楽しかったんです。メーカーだったので、目的は全員同じ。同じフロアで働き、同じものを作るという一体感があったからこその楽しさだったと、振り返ってみて思います。
一方で、SESではエンジニアがそれぞれ別の現場で働くので、どうしても孤独を感じやすくなりますよね。でも、せっかく入社してくれたエンジニアに「辞めたい」だなんて思わせたくないじゃないですか。だから、かつて私が感じていたような「働く楽しさ」を、SESという働き方でも体感できるようにしたいと考えたんです。
ーーその上で、具体的にはどんな工夫を行っているんですか?
松枝:大きく分けて三つあります。「研修」「アサイン」「相談体制」の工夫です。
私が用意したオリジナルの課題に取り組んでもらうなど、手を動かす演習を中心にした研修を実施。内容も一律ではなく、スキルや特性に合わせて設定しています。
教材を「読んでおいて」で終わらせるのではなく、パズルやゲームを解くような感覚でプログラミングを楽しんでもらいたいと考えて設計しました。
個⼈の希望を最⼤限考慮して、無理なアサインは絶対にしません。全て希望通りにできない場合も、案件情報を開示して、エンジニアと一緒に選択肢を確認しながら「この条件ならやってみよう」と納得してもらうことを大切にしています。
現在、待機中のエンジニアも数名いますが、その間も一定割合の給与を支給しています。正直なところ、エンジニアの意向を考慮しなければアサインすることは容易です。それでも、楽しく働き続けてもらうためには、無理にアサインするのではなく私や営業が案件獲得に奔走しようという考えです。
「どうしても待機は避けたい」という人もいれば、「自宅待機でもいいので、じっくり探したい」という人もいます。経済状況も価値観も人それぞれなので、一律ではなく、ケースバイケースで調整しています。
エンジニアと営業、そして私の三名でLINEグループを作り、何かあればすぐに連絡できる体制にしています。エンジニアごとにグループを作るので、私のLINEには100以上のグループがあるんですよ。
「相談のお時間をください」と改まって伺いを立てる必要はなく、「今こういうことで困っていて……」と一言送ってもらえればいい。そんな雰囲気を意識的につくっているんです。とにかく相談のハードルを下げたいので、新しい現場に入ったばかりのエンジニアには、こちらからも「困っていることはない?」と連絡を入れるようにしています。
ーーとにかくエンジニアを第一に考えた体制づくりをしているということですね。
松枝:SESの場合、企業によっては現場に出た後に過度な報告を求められることもあると聞きます。ですが、ルールで縛りすぎてしんどくなってしまっては本末転倒です。なので、連絡が必要な時もLINEで一言送れば済むようにしました。
私自身、過去には「この開発を続けるかどうか」を決めるために何十ページもの資料を作って上司に説明していたことがありますが、こんなに無駄な仕事はありませんよね。しかも、最終的な判断は現場に委ねられるので、何かあったときの責任もエンジニアにのしかかります。
業務の責任は、どんなときでも上がとるべきだと思うんです。そして、エンジニアには仕事に集中してもらいたい。そのためにも、不必要な資料作りや会議はできるだけ減らしていきたいと考えています。
ーー松枝さん自身とエンジニアのつながりの強さが分かります。エンジニア同士の連携はどう高めているんですか?
松枝:定期的に帰社日を設けて、交流する機会を作るようにしています。社内イベントも行っていますが、参加は強制ではなく、「来たいときだけ来てくれたら十分」という感覚です。
「野外研修」と称してキャンプへ行ったり、エンジニアの希望に応えて屋形船で食事をしたり、仕事以外でもつながれる仕組みを用意しています。世代やスキルの違うエンジニア同士が気軽に話せる場を増やした結果、横の連携が生まれやすくなり、私を介さなくても自然と相談し合う動きも増えてきました。
これからも「エンジニアが楽しんで働ける会社」であり続けたいというのが私の考えです。そのためにも、同じ思いで会社を引っ張ってくれる次期リーダーを育てていきたいですね。
ーーエンジニアの皆さんは、会社のトップと距離が近いことについてどう感じていますか?
大野:面接で初めてお会いした時から、同じ目線で話してくれる姿勢に安心感がありました。さまざまな企業の選考を受ける中で、実際には求人に記載されているよりも高いスキルを求められるケースも少なくなかったのですが、松枝さんはきちんと私の経験を評価してくれていることが伝わって、信頼できると思ったんです。
吉田:私もエンジニアとしては約15年のブランクがある状態だったので面接を受けることも不安でしたが、松枝さんと話している中で「ここなら大丈夫かもしれない」という直感がありました。丁寧に向き合ってくれる姿勢が感じられて、「温かく見守ってくれそうだな」と思えたんですよね。
ーー皆さんは普段、どのようなシーンで松枝さんと接点を持っているんですか?
吉田:現場で困ったことがあったときは、いつも相談しています。普通は社長という立場の方にはなかなか相談しづらいと思うのですが、松枝さんはLINEで「こういうことで困っているんですが、どうしたらいいですか」と送ると、すぐに対応してくれるんです。
普段は他社のエンジニアと一緒にプロジェクトに参画していますが、社内に相談できる相手がいるのは心強いですし、「一人で抱え込まなくていい」と思えるのは大きな支えになっています。
大野:私も現場に常駐しているので顔を合わせる機会は多くありませんが、会社のイベントなどで会う度に松枝さんの方から声をかけてくださいます。それがきっかけになって、ちょっとした相談につながることもありますね。
松枝さん自身から「やってあげている」というスタンスを全く感じない点も、魅力の一つだなと思います。「みんなで一緒にやろう」という空気を作ってくれているんですよね。
また、松枝さんとの距離が近いことで、経営の考え方や会社の動き方を具体的に聞けるのも大きなメリットです。自分の単価も分かるので、スキルと収入に対する意識も高まりました。
ーー今後は、エンジニアとしてどのように働いていきたいですか?
大野:リーダーとしての役割も担えるようになりたいですね。メンバーをまとめたり、フォローしながらプロジェクトを前に進めるポジションに挑戦したいです。会社の雰囲気をさらに良くしていく役割にも、少しずつ関わっていけたらと思っています。
吉田:私は、家庭と仕事を両立しながら、自分のできる範囲で少しずつ成長していきたいです。過去の経験も活かしつつ、新しい知識を吸収しながら、周囲に貢献できるエンジニアになれたらと思っています。まずは目の前の仕事にしっかり向き合い、その中で少しずつ力をつけていきたいですね。
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取材・文/福永太郎 撮影/竹井俊晴 編集/秋元 祐香里(編集部)
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