「実際にMSの採用サイトを見ると、多くの求人が掲載されていますよね」
Oracle、800人削減を届け出た3日後にエンジニア募集 なぜ「切りながら採る」のか
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2026年9月17日、Oracleは「Software Developer 3」の求人を掲載した。
しかし、その3日前。
Oracle Americaは800人の人員削減を届け出ている。
しかも、業績不振によるリストラとは言い切れない。
直前に発表された決算では、OracleのCloud Infrastructure(IaaS)売上高は前年同期比121%増。AIインフラへの需要も旺盛だ。
猛烈に伸びている事業の裏で、人を減らす。
その一方で、新たなエンジニアを採る。
一体、何が起きているのだろうか。
目次
削減対象で最多だった「Software Developer 3」
9月14日、Oracle Americaは米California州とWashington州で人員削減を届け出た。
対象となるのはCalifornia州で441人、Washington州Seattleで359人。合わせて800人に上る。いずれも11月13日付での恒久的な削減として届け出られている。
同じ時期に進められた人員削減について、さらに興味深い数字が報じられている。
Business Insiderが入手した文書によれば、OracleのAmerica Cloud Infrastructure組織で削減対象となった546人のうち、単一の職種として最も人数が多かったのは「Software Developer 3」。57人が対象となったという。
全レベルのSoftware Developerを合わせると、削減対象の約17%を占める。
なお、Business Insider自身も、この文書がOracleのCloud Infrastructure部門で削減された全従業員を網羅しているかまでは確認できていないとしている。
そして、この届け出から3日後の9月17日。
OracleはOCI(Oracle Cloud Infrastructure)の「Software Developer 3」の求人を掲載した。
Software Developerが今回の削減対象に多く含まれる一方で、Oracleは新たなSoftware Developerを募集している。
ただし、これだけで「削減した人員を新たな人員に入れ替えている」とまでは言えない。
今回削減対象となった人と、新たに募集しているポジションでは、所属チームや担当業務、求められる専門性などが異なる可能性がある。Oracleも、今回の人員削減と新規採用の関係について説明していない。
それでも、興味深い事実は残る。
だから今回のレイオフを、「AIによってソフトウエアエンジニアが不要になった」と単純に説明することはできない。
売上121%増。それでも起きた人員削減
もう一つ、このレイオフを単純に捉えにくくしている数字がある。
Oracleが9月10日に発表した2027年度第1四半期決算だ。
Cloud Infrastructure(IaaS)の売上高は74億ドル。
前年同期比121%増だった。
Oracleは決算発表で、AI Cloud TrainingやInferencing Servicesへの顧客需要が供給を上回っているとも説明している。
つまり、
事業は伸びている。
AI需要もある。
エンジニアを含む人員削減を進めている。
一方で、新たなエンジニアも募集している。
もちろん、これらの事実だけから「AI人材への入れ替えが今回のレイオフの目的だった」などと結論付けることはできない。
Oracleは今回の人員削減と新規求人との関係を説明していないからだ。
しかし少なくとも、「業績が悪くなったから人を切る」という従来のレイオフのイメージだけでは、今回起きていることを捉えきれない。そして実は、似た光景をエンジニアtypeは今年、別のビッグテックでも見ている。
Microsoftでも起きた「切る」と「採る」の同時進行
エンジニアtypeでは今年2月、米Microsoftに18年間勤務し、2025年5月の大規模レイオフで職を失った元Principal Software Engineerの太田一郎さんに話を聞いた。
太田さんは、WordやPowerPointの翻訳機能、Teamsのチャット翻訳、ライブ字幕などの開発に携わり、Principal Software Engineerまで上り詰めた人物だ。
レイオフ直前には、太田さんのチームがMicrosoftの主力戦略であるCopilotの中枢へ合流する計画まであったという。
それでも、ある朝突然Teamsに「Critical Business Update」という会議が入った。
そこで告げられたのは、
「あなたの職位は廃止されました」
という言葉だった。
面談は、わずか5分。
太田さんによれば、若手は統合先に残った一方、シニア層は相次いで解雇され、プロダクトマネジャーもトップのマネジャーを含めて解雇対象になったという。
では、Microsoftはエンジニアそのものを必要としなくなったのか。
そうではなかった。
太田さん自身、取材でこう語っている。
大量の人員を削減する。
しかし、新たな人材も募集する。
Oracleで今確認できる「切る」と「採る」の同時進行と重なる。
「エンジニアが不要」では説明できない
太田さんは取材で、現在のビッグテックの採用についても興味深い話をしていた。
レイオフによって数千人単位の経験豊富なエンジニアが市場へ放出され、限られた求人を奪い合う。
それでも企業は、簡単には採用基準を下げないという。
太田さんによれば、ビッグテックにはこんな採用原則がある。
「間違って不採用にするミスはいいが、採用すべきでない人を雇うミスは絶対に犯すな」
候補者が10人いても、基準を満たさなければ「0人採用」もあり得るという。
ここまで見てくると、
「エンジニアが余っているから切る」
「エンジニアが必要だから採る」
という単純な二択では、今ビッグテックで起きていることを捉えきれない。
Oracleでは、Software Developerを含む人員削減が進む一方、新たなSoftware Developerの求人が掲載された。
Microsoftでも、大規模なレイオフの一方で求人は存在していた。
「切る」と「採る」が、同時に起きている。
ただし、それぞれの企業が何を基準に「残す人」「削減する人」「新たに採る人」を決めているのかは、外部からは分からない。
だからこそ、エンジニア側には厄介な問題が残る。
では、どこへ行けば「安全」なのか
成長している会社へ行けばいいのか。
成長事業に乗ればいいのか。
AIに近い仕事をすればいいのか。
今回のOracleを見る限り、どれか一つを選べば安心とは言い切れない。
Cloud Infrastructureの売上高は前年同期比121%増。AIインフラへの需要も旺盛だ。それでも、人員削減は起きている。
エンジニアtypeでは先日、現在も米Microsoftで働くソフトウエアエンジニア・牛尾剛さんにも、レイオフについて話を聞いた。
牛尾さんも約3年半前、Microsoftでレイオフが始まった際、
「次にクビになるのは俺やろ」
と恐怖を感じたという。
当時、牛尾さんが考えた対策は「実力を上げること」だった。会社から必要とされるだけの実力を身に付ければ、生き残れると考えた。
ところが生成AIの登場を経て、その考え方も変わった。
会社から必要とされ続けることだけを「安全」と考えるのではなく、仮に会社から放り出されても、次へ進める状態をつくっておく。
会社の外でも通用する経験を積み、自分で環境を変えられる状態にしておく。
今回のOracleのレイオフを見ると、この「安全」の捉え方はより現実味を帯びる。
成長企業にいることも、成長事業にいることも、そこで働き続けられる保証にはならない。
だとすれば、これからのエンジニアにとっての「安全」は、切られない場所を探すことではなく、切られてもいつでも次へ動ける状態をつくっておくことなのかもしれない。
編集/玉城智子(編集部)
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