株式会社Kyash
執行役員VPoE
小西裕介さん|こにふぁー(@konifar)
株式会社ワークスアプリケーションズ、株式会社奇兵隊、Quipper Limited. を経て、2017年Kyash入社。AndroidやiOS開発を経験した後に、19年からMobileチームのEMを経てサーバーサイド、QAチームのEMも担った。21年にEMから離れた後、QAチームのメンバーとしてテストの自動化を半年ほど手がけた後に、22年よりVPoEとしてプロダクト開発チーム全体のマネジメントに従事
NEW! 働き方
エンジニアとして成長するには、どんな環境に身を置き、どんな仕事に挑めばいいのだろうか。
自分より優れたエンジニアのいる会社へ行く。難しい仕事を引き受ける。マネジメントに挑戦する。選択肢はいくつもあるが、その時々で「これが正解だ」と判断するのは難しい。
だからこそ参考になるのが、そうした分岐を何度も経験してきた人の選択だ。
株式会社Kyashで執行役員VPoEを務める小西裕介(こにふぁー)さんは、約2000人規模の企業から社員数3名のスタートアップへ転職。その後、「もっと高いレベルのエンジニアに囲まれて働きたい」との思いでグローバル環境の会社へ移り、再び少人数の組織を求めてKyashに入社した。
その後も、Androidエンジニアからマネジャー、VPoEへと役割を広げてきたが、そのキャリアは最初から描いた計画通りに進んできたわけではない。
キャリアの分岐点に立つたび、こにふぁーさんは何を手掛かりに次の道を選んできたのだろうか。
株式会社Kyash
執行役員VPoE
小西裕介さん|こにふぁー(@konifar)
株式会社ワークスアプリケーションズ、株式会社奇兵隊、Quipper Limited. を経て、2017年Kyash入社。AndroidやiOS開発を経験した後に、19年からMobileチームのEMを経てサーバーサイド、QAチームのEMも担った。21年にEMから離れた後、QAチームのメンバーとしてテストの自動化を半年ほど手がけた後に、22年よりVPoEとしてプロダクト開発チーム全体のマネジメントに従事
こにふぁーさんが、エンジニアとして「もっと上を目指したい」と強く意識するようになったのは、新卒で入社した企業を離れ、社員数3人ほどのスタートアップへ転職してからだった。
当時はスマートフォンが急速に普及し、Androidアプリの開発も広がり始めていた時期。こにふぁーさんも転職先で初めてAndroid開発を担当することになった。
「学びながら手を動かすうちに、社内では自分が一番Android開発に詳しくなっていました。でも、社外に目を向けると全くそんなことはなくて。日本だと技術ごとにコミュニティーがあるじゃないですか。そこに行くと、めちゃくちゃすごい人たちがいるんですよね。
自分もAndroidをやるなら、まず社内で一番詳しくなりたい。その次は国内でもトップレベルになりたいと思う。でも、国内のすごい人たちを見ると、その先には海外が見えてきて、『全然ダメだな』ってなる。常にそんな感じでした」
当時は勉強会にも頻繁に参加し、月に二回ほど登壇していた。そこで目にしたのは、自分よりはるかに深く技術を追い続けているエンジニアたちだった。
「登壇を聞いて、『こんなにちゃんとキャッチアップしてるんだ』と思うし、懇親会でも話すじゃないですか。そうすると、自分の相対的な立ち位置が分かる。ずっと『井の中の蛙だな』『自分はまだ弱いな』って焦ってた感じはありますね」
その焦りは、次の環境を選ぶ理由にもなった。
三人のスタートアップでは、開発に必要なことを幅広く経験できた一方で、このままで本当に一流のエンジニアになれるのかという不安もあった。そこで、複数のAndroidエンジニアが在籍し、英語で開発する会社へ転職した。
だが、なぜそこまで「トップ」を目指したかったのか。こにふぁーさんは、それを「美学」と表現する。
「技術的に尖っている人って、やっぱりかっこいいと思うんですよ。世界で使われるものを作っていたり、ものすごく深く技術を理解していたり。
なんでそれをかっこいいと思うようになったかというと、社会人になってから出会った先輩とか、コミュニティーで出会った人たちの影響ですね。『この人すごいな』『こういう人がかっこいいな』というのを目の当たりにしていくと、自分の中の基準も少しずつ変わっていくんだと思います」
こにふぁーさんのキャリアを動かしてきたのは、明確なゴールからの逆算ではなく、「こんな人になれたらかっこいい」という憧れだった。
自分よりすごい人たちを目の当たりにし、「もっと上に行きたい」と思うようになったこにふぁーさん。
では、その差をどう埋めてきたのか。振り返ってみると、こにふぁーさん自身は「成長できたのは、運が良かった部分も大きい」と話す。
「僕、すごく上司に恵まれていて、振り返ってみると常にいい感じのストレッチをもらってきた気がするんですよ。
一番分かりやすいのは、Androidのアプリ開発を初めてやった時ですね。若くても『やっていい』っていう環境って、本来そんなにないじゃないですか。詳しい人がいるなら、その人がやった方がいい。でも当時は、その時にいる社員でなんとかするしかなかった。
そこで『Androidどうする?』ってなった時に、僕はほとんど分かってなかったけど、『じゃあやります』って言ったんですよね」
もちろん、引き受けたからといって、全てを一人で解決できたわけではない。
「本を読んだり、当時盛んだったAndroidの同人誌を読みあさったりしてキャッチアップしました。でも、進め方も含めて自分だけじゃ無理だなって途中で判断したんです。
それで、詳しい人を相談役として雇えないかって会社に相談して、実際にお願いして、週1回相談する時間をつくりました。『自分だけじゃ無理だ』と判断することと、他の人に頼るっていう選択肢は、その時に初めて身に付いたと思います」
できないから断るのではなく、まず引き受ける。その上で、自分に足りないものがあれば埋めていく。その姿勢は、Kyashに入社してからも変わらなかった。
「Kyashに入った当初は、普通のAndroidエンジニアでした。でもiOS側のリソースが足りないとなったらiOSをやるし、バックエンドが足りないとなったら簡単なAPIは自分で書く。
そうやって足りないところを埋めていたら、『モバイルチームを立ち上げたいんだけど、マネジャーやらない?』って話が来て。それも『やります』って言いました。その後のVPoEも執行役員も、必要だと思ったから『まあやります』と引き受けた形です」
もちろん、誰にでも同じような機会が巡ってくるわけではない。それでも、こにふぁーさんは「自分は機会をもらえた」と言う一方で、その機会が来るたびに必ず手を挙げてきた。
「振り返ると、いいタイミングで難しい仕事を任せてもらえたので、運が良かったとは思います。ただ、仕事を任せる側も、誰でもいいわけではないですよね。
『この人にはちょっと難しいかもしれないけど、任せてみよう』と思ってもらうには、それまでの仕事ぶりが関係する。僕自身、必要なことがあればずっと『全部やります』って言ってきました。そういう意味では、多少の無謀さも必要なのかもしれません」
完璧にできる自信がついてから動くのではなく、少し難しそうでも、まずは「やります」と言ってみる。こにふぁーさんのキャリアは、その積み重ねで少しずつ広がってきた。
なぜこにふぁーさんは、まだ十分にできる自信がない仕事でも「やります」と言えるのだろうか。
本人に聞くと、少し意外な答えが返ってきた。
「僕、100点でやろうってあんまり思ってないかもしれないですね。むしろ、ストレッチした環境の方が楽なんですよ。
『これは難しいかもしれないけど』っていう“免罪符”があると、もちろん頑張るんですけど、うまくいかなかった時も軌道修正を前提に考えられるじゃないですか。
逆に、できて当然みたいな環境でアサインされる方が、僕は性格的にしんどいんですよね。ちゃんとやらなきゃ、完璧にやらなきゃって思ってしまうので」
50点や60点しか取れないかもしれなくても、まずやってみる。足りない部分が見えたら、その都度埋めていけばいい。
マネジャーになってからも、その感覚はあまり変わっていないという。
「全部自分でできるようになってからやるって考えているうちは、多分ずっと始められないんですよね。やってみて、自分だけじゃ無理だと思ったら人に頼ればいい。そういう選択肢を持てるようになったのは大きかったと思います。
今も、マネジメントがうまくできてる感覚はそんなにないんですよ。部長みたいな立場ではあるけど、本来部長がやらなくてもいいことまで自分でやってる感じもあるし、エレガントにできてるとは全然思ってない。
でも、問題があればとりあえず何とかする。50点ぐらいでも前に進めて、他の人のやり方を見たり、本を読んだりしながら少しずつ良くしていくという感じですね」
こにふぁーさんにとってのストレッチとは、自分を追い込んで限界まで頑張ることではない。少し背伸びした場所に立ち、分からないことや足りないことを見つけながら、前に進んでいくことなのだろう。
少し難しい仕事でも、まず引き受けてみる。うまくできなければ、その都度足りないものを補っていく。
そうやって役割を広げてきたこにふぁーさんだが、「成長するために何をするか」は、あまり考えすぎなくていいという。
「若い時の自分に何を勧めるかと言われたら、自分が『かっこいい』と思うものを考えながら、目の前のことをとにかく頑張る、ぐらいですかね。
やりたいと思っていることとか、自分でちゃんと腹落ちして『これはやるべきだ』と思ったことをやる。その方が多分、続くと思うんです」
振り返れば、こにふぁーさん自身もそうだった。
技術的に尖ったエンジニアを「かっこいい」と思い、もっと高いレベルの人たちがいる環境へ飛び込んだ。Android開発を任された時も、マネジャーを頼まれた時も、最初から十分な自信があったわけではない。それでも、その時の自分が「やる」と腹落ちしたものを引き受けてきた。
その結果を、こにふぁーさんは後から「成長」と呼ぶ。
「『今、俺は成長してるぞ』って感じている時って、あんまり成長してないと思ってるんですよ。
後から振り返って、『すげえ大変だったけど、あの時成長したな』ぐらいがちょうどいいと思うんです。成長を考えすぎずに目の前のことを頑張っていたら、後でそれが成長だったと思える。それでいいんじゃないですかね」
転職するべきか。専門領域を変えるべきか。マネジャーを引き受けるべきか。キャリアの分岐点に立つたび、「どちらを選べば成長できるか」と考えたくなる。
だが、その選択が正しかったのか、どれだけ自分を成長させたのかは、その瞬間には分からない。
だからこそ、自分が「かっこいい」と思える方向を見失わず、その時にやりたい、やるべきだと思えることに向き合う。その意味は後から確かめればいい。
こにふぁーさんのキャリアは、そんな選び方でも道はつながっていくことを教えてくれる。
文・編集/今中康達(編集部)
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