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「共感できる会社でタイパよく働きたい」そう焦る若手こそ、あえて“遠回り”の道を行け【Wantedly仲 暁子】

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ビジョンに共感し、最新技術をキャッチアップし、効率的に成果を出すーーそれなのに、どこか満たされない。キャリアの「正解」を急ぐあまり、疲弊してしまうエンジニアは少なくないだろう。

「共感さえあれば、人は熱中できると思っていた」と振り返るのは、ウォンテッドリー創業者の仲 暁子さんだ。同社を成長させる過程で痛感したのは、共感や効率だけでは走れない現実と、「遠回り」の効用だったという。

泥臭く「自分に合わないもの」を削ぎ落としていくAIが最適解を提示してくれる時代に、あえてタイパの悪い選択をする意味とは何なのか。失敗を経て見出したキャリアの捉え直しと、10年後の選択肢を広げるための行動の哲学を紐解く。

※本記事は2026年11月に発売予定の雑誌『type就活』から先行公開をしています。

プロフィール画像

ウォンテッドリー
代表取締役 CEO
仲 暁子さん(@acanocic

1984年生まれ。2008年、京都大学経済学部卒業後、ゴールドマン・サックス証券入社。2年で退職し、Facebook Japan初期メンバーを経て、10年にウォンテッドリーを創業。12年、ビジネスSNS『Wantedly』をリリース

「共感」があれば、人は活躍できると思っていた

私は2014年に受けたインタビューで「自分でやって何度か転んで、痛い目に遭ってみることが、人生を切り開く近道だ」と語っていたそうです。

今振り返ってみても、その思いは変わりません。人に言われたことをやって転ぶより、自分で考え、決断して転んだ方がたくさん学べます。何かに迷っても「駄目元でやってみよう」と、まず行動に移すように意識してきました。

ウォンテッドリーの起業もその一つです。思うようにいかないことや、大小さまざまな失敗をたくさん経験しながら、仲間と一緒にサービスを成長させてきました。

ただ、創業当時の私は「地頭が良くて経営者のビジョンに共感していれば、誰でも成果を出せる」と信じて疑いませんでした。「共感」さえあれば人は仕事に夢中になる。夢中になれば成果も出ると、本気で思っていたんです。

でも、周囲の働きぶりを長く見てきて「それだけでは長続きしない」と思うようになりました。ビジョンへの強い共感があって入社したはずなのに、途中で急に勢いを失ってバーンアウトしてしまう人がいる。

逆に、最初は目立たなくても、自分の気質や強みにピタッとハマる役割を見つけた途端に、大きく花開く人も珍しくありません。どれだけ会社の目指す方向に共感していたとしても、日々の業務内容やチームが適性と合っていなければ、人はパフォーマンスを持続できないのだと気付いたのです。

共感至上主義を手放したというウォンテッドリー仲さん

一緒に働きたいかどうかは、AIでは分からない

「共感」だけでは足りないと悟ってからは、ビジネスSNSの『Wantedly』にスキルマッチング機能や性格診断機能を実装し、仕事内容への適性や相性を判断材料に加えるようになりました。「共感至上主義」というかつての正解を手放し、私の考え方が変化するにつれて、サービスの在り方も少しずつ変わってきているんです。

ただ、私の考えがアップデートされてサービスがどれだけ進化しても、創業時から変わらずに信じ続けているものもあります。それが「直接会って話すこと」の価値です。

今では広く浸透している「カジュアル面談」ですが、『Wantedly』はその価値をいち早く提唱し、サービスとして広めてきました。創業間もない頃から地道に推進してきたこの取り組みも、現在では面談したい特定の社員や経営陣を自ら選んでリクエストできる「指名カジュアル面談」へと進化し、利用者の皆さんからも好評です。

直接会って話すことには、二つの意味があります。一つは、能力が期待値に適うかどうかの見極め。もう一つは、互いに「一緒に働きたい」と思えるかどうかの確認です。

見極めは条件と事実の照合作業でもあるのでAIが得意とする部分ですが、相性は五感や直感による部分が多いため、実際に話してみるまで馬が合うかどうかは分かりません。最終的に生身の人間同士が机を並べて働くわけですから、直接会って腹を割って話す機会を求める声は、当面なくならないでしょう。

いくらAIが進化しても、最後の最後は「自分で体感してみないと分からない」のです。

向いているを探すより、向いていないを消していく

最近はAIを使えば、自分の経歴やスキルをもとに「次はこんな仕事が向いている」「このキャリアを目指すべき」といった、それらしい答えを簡単に手に入れられるようになりました。

でも私は、キャリアについて迷ったときほど、あえてタイパ・コスパの悪いことに時間を使ってもいいと思っています。一見遠回りに見えても、長い目で見ればその方が早く自分なりの答えに近づけることがあるからです。

学生時代の私は、これからどう生きていくか、とにかく悩んでいました。偉人の伝記や自己啓発本を読みあさり、毎日のようにジャーナリングをして自分と向き合いましたが、いくら考えても答えはなかなか見つかりません。

ただ、自分に「向いていること」をピンポイントで探し当てるのは難しくても、実際にやってみて「自分には合わないな」と肌で感じるのは意外と簡単です。最初から正解を当てにいくのではなく、経験を通じて「向いていないこと」を一つずつそぎ落としていく。

その先に残ったのが「今熱中できることに全力で取り組む」という生き方でした。将来の目標から逆算して「今は我慢する」という道もあったかもしれませんが、私は選びませんでした。

かつてスティーブ・ジョブズが語った「コネクティング・ザ・ドッツ」のように、目の前のことに没頭した経験が、後から振り返ったときに一本の線につながって見えるキャリアの方が、納得感があるからです。

むしろその方が、成果も出やすく結果的にキャリアの選択肢も広がるはずだと信じ、今に至るまでこの考えを貫いています。

いくらAIが進化しても、最後の最後は「自分で体感してみないと分からない」と語る仲さん

若いうちの遠回りが、10年後に選べる仕事を増やす

先ほど「経験を通じてそぎ落とす」と言いましたが、これは要するに「仮説と検証の繰り返し」です。

興味のある技術に触れてみる。社内の別のプロジェクトに手を挙げてみる。副業や個人開発を始めてみる。少しでも気になることがあれば、まず試してみればいいと思います。そこで向いていると思ったら突き詰めればいいし、違うと思ったら次に移ればいい。

特にキャリアの早い段階では、一度の選択ですべてが決まるわけではありません。失敗したとしても、そこで得た経験までなくなるわけではないからです。

だからこそ、目先の効率だけを考えて「一番得になりそうな選択肢」を探し続けるより、自分が何に熱中できて、何には違和感を覚えるのかを、実際の経験から確かめてほしいと思います。

そうした答えのない問いにじっくり向き合うのは、一見タイパが悪いように感じるかもしれません。

でも、すぐに正解が見つからなくてもいいんです。タイパを度外視して遠回りし、深く考えて行動したという事実そのものが、その後の人生の「発射台の角度」を変えてくれます。

最初の角度がほんの少し上を向くだけで、将来届く飛距離は驚くほど大きく変わるはずです。私自身、そうやって見つけた指針に何度も助けられてきました。

皆さんにも、安心して「自分だけの遠回り」を経験してほしいなと思います。


取材・文/武田敏則(グレタケ) 撮影/洞澤 佐智子 編集/今中康達(編集部)

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