アイキャッチ

AI時代は「頭のいい人」から無価値になる? 識者4人が語る新たな“優秀さ”の条件

NEW!  スキル

知識が豊富で、論理的に物事を考え、誰よりも早く正解を導き出せる。そんな「頭のいい人」が評価されてきた時代は、終わりを迎えつつあるのかもしれない。

事実、テクノロジーの最前線を走る識者たちからも、従来の「頭のよさ」を問い直すような発言が相次いでいる。エンジニアも、技術力や論理的思考力を磨き続けるだけでは不十分ということだろうか。

落合陽一さん、川邊 健太郎さん、川上量生さん、東京大学 総長・藤井輝夫さん。4人の言葉から、AI時代における「優秀さ」の新しい条件を探った。

落合陽一と川邊 健太郎が語る頭脳の限界

「AIを使うことによって、僕の生産性は150倍くらいになったと言っても過言ではありません」

そう語るのは、メディアアーティストの落合陽一さん。300~400ページある新刊の校正作業が瞬く間に終わり、取材を受けている裏でもAIエージェントが新しい3D映像作品のプログラムを書き進める。「50体くらい同時に走らせながらタスクをこなしているので、もはやAIなくして仕事は成り立たないと思うほど」との体感を口にした。

あらゆるタスクをAIに明け渡している落合さんだが、AI時代に最も重要だと考える能力は何だと捉えているのか。

マイクを手に語るメディアアーティストの落合陽一さん

聞くと、これまでエンジニアをはじめとする優秀なビジネスパーソンの必須スキルとされてきた「ロジカルシンキング」とは異なるキーワードが飛び出した。

今やロジカルシンキングはAIが得意とする最たる分野。だとするなら、人間がやるべきは、筋道を立てて未来を予測することではなく、直感に従って行動を起こし、興味がある領域に飛び込むことではないでしょうか。直感ですらAIに投げれば、ロジカルに組み立て直してくれる便利な時代ですからね。

【落合陽一】AIを前にロジカルシンキングは無意味。エンジニアなら「仕事で使える“本物”」で勝負してほしい

同様の考えを持つのが、今の時代を象徴するキャリアである「AIソロプレナー」として新たなスタートを切った川邊 健太郎さんだ。

LINEヤフーという巨大組織を率いる立場を離れ、AIと自分だけで事業をつくる挑戦に挑んでいる川邊さんだが、30年間ネット産業のど真ん中を走ってきた人が、最先端のAIをパートナーにしながら「頭脳」ではない要素の重要性を説く。ここに、知性の価値が再定義されつつある事実が表れている。

感情や五感、身体というものを総動員する方に行った方がいいでしょうね。頭脳だけで、ましてや正解を探すみたいなのって、AIに圧敗しますから。「そこじゃないでしょ」という感じですよね。

データドリブンで合理的に何かを見て変えていくというのは、AIの方が絶対に強いです。

だから、そうじゃない何かを考えたり着想したりするには、そうじゃない何かを用いながら考えるしかないでしょうね。

「頭脳だけで正解を探したら、AIに大敗する」川邊健太郎が旅と“ヒュー!”に見いだすもの

川邊さんがこうした考えに至った背景には、AIが「究極の指示待ち」であるという認識がある。

AIは与えられた課題を瞬時に解決してくれる。しかし、そもそも何を実現したいのか、その出発点となる意思がなければ、AIの能力を活かすことはできないのだ。

「正解を出す力」以上に「形にする力」が必要

しかし、落合さんも川邊さんも、決して「論理的に考えることをやめ、感性だけを磨けばいい」と主張しているわけではない。

論理的に正解を導き出すことよりも、根拠が不確かな直感を信じて、まず動いてみること。その重要性が増しているというのが落合さんの考えだ。

だからこそ、エンジニアには知識を得るだけで満足せず、自分が興味を持てる領域の仕事で使えるような「本物」の道具を作ってみてほしいと落合さんは呼びかける。お試しツールではなく、あくまでも「本物」であることに意味があるのだ、と。

川邊さんも同様に、AIについて知識を得るだけでなく、実際にバイブコーディングでソフトウエアを作ってみることを勧めている。自ら手を動かし、AIの能力を体感して初めて、「では、自分は何をやりたいのか」という問いに向き合えるからだ。

眼鏡をかけた前LINEヤフー代表取締役会長の川邊健太郎氏が、親しみやすい笑顔で斜め上を向くポートレート

自らの好奇心や直感を出発点に行動を起こし、AIを使ってそれを形にしていくーーAIが人間の知的作業を次々と代替する時代にあって、そんな主体性こそがこれからの「優秀さ」を左右するのかもしれない。

川上量生が説く「常識を捨て、原理を学ぶ」戦略

とはいえ、AI時代に独自の発想を生み出すのは容易ではない。その糸口を示してくれるのが、ドワンゴ創業者・川上量生さんの考え方だ。

ニコニコ動画やN高等学校など、数々の事業を立ち上げてきた川上さんが、ビジネスで成功するために重視してきたのは「他人と同じ場所で戦わないこと」。そのために、多くの人が正しいと信じている常識を捨ててきたという。

既存の常識にとらわれず、自分だけの答えを導き出す。そのために川上さんが勧めるのは、「勉強すること」だ。極めてシンプルな答えに聞こえるが、これは小手先のノウハウを覚えることではない。物事の根底にある「原理」を学ぶことが重要なのだという。

ノウハウを覚えるのではなく、物事の「原理」を学ぶのです。人間のつまらないプライドは捨てて、AIを教師にしてあらゆるジャンルの知識を徹底的にインプットしてください。
(中略)
目先の成功法則や正解らしきものをなぞるだけの人間は、AIの得意分野で勝負しているのと同じであり、あっけなく代替されてしまうでしょう。

そうではなく、自らがあらゆる知識を吸収し、AIと人間のコミュニケーションをつなぐ重要な「ハブ」のような存在になること。それこそが、AI時代に代替不可能な存在になる道だと思います。

川上量生「人間のプライドは捨てて原理を学べ」AI時代、“現代のアリストテレス”を目指すべき理由

落合さんや川邊さんが説いた「直感」や「好奇心」の重要性に、川上さんの「原理を学ぶ」という視点。一見すると異なるアプローチだが、いずれもAIが導き出す答えを鵜呑みにせず、自分ならではの価値を生み出すためのものに違いないだろう。

インタビューに応じるドワンゴ 顧問・川上量生さん

正解はAIに考えてもらえばいい? 東大総長が示す答え

ここまでの3人の言葉を聞くと、AIが人間よりも賢くなっていく時代に、そもそも自分の頭で考えることにどれほどの意味があるのか、という疑問も浮かんでくる。

その問いに一つの答えを示してくれるのが、東京大学総長の藤井輝夫さんだ。

藤井さんは、AIがどれほど進化しても、人間自身が考え、試行錯誤することの価値は失われないと強調する。

私は、AIをどう使うかよりも、AIで何をしないかを考えた方がいいと思っています。「何かやり方がありますか?」とAIに直接答えを聞けば、複数のオプションが返ってくるでしょう。しかし、本来そうしたアイデアは、人間自身がちゃんと思い付き「これがいいのではないか」と考えるべきなのです。

東大総長・藤井輝夫「AIに“達成感”まで明け渡すな」

正解のない問題に対して、最初から完成形を決めつけるのではなく、実際に作り、使ってもらい、反応を見ながら改善を重ねていく。AIがそうした試行錯誤を加速させる強力な道具になるのは事実だ。

マイクを握って語る東京大学 総長・藤井輝夫さん

一方で、自ら考え、手を動かす過程までAIに委ねてしまうことには警鐘を鳴らす。

人には、「自分はこれを実現したい」「こんなことができたらいい」という思いがありますよね。自分で考えたことが実際に形になったときには、やっぱり喜びや達成感がある。
(中略)
主体的に仕事に関わるからこそ達成感があり、もちろんときには失敗することもあるでしょう。ですが、その経験を繰り返していくことが、人が成長していく上では大事なんです。

東大総長・藤井輝夫「AIに“達成感”まで明け渡すな」

AIが人間の知的作業を次々と代替する時代だからといって、知識や論理的思考力が不要になるわけではない。ただし、それらの能力を持っていることだけでは、他者との違いを生み出しにくくなっていく。

これからの「頭のいい人」とは、誰よりも多くの正解を知っている人ではなく、自分にしかない問いを立て、AIを使いながらそれを現実の価値へと変えていける人なのかもしれない。

エンジニアtypeが提供する「12種類のキャラタイプで分かる!エンジニアタイプ診断」へ誘導するバナー。コードの深淵を覗く「技術探求タイプ」など、ITエンジニアが自身の志向性や強みを客観的に自己分析し、キャリアパスや適した働き方を発見できるインタラクティブなWeb診断コンテンツへの導線を示す

Xをフォローしよう

この記事をシェア

RELATED関連記事

JOB BOARD編集部オススメ求人特集

RANKING人気記事ランキング





サイトマップ